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【ネタバレ少し含】インド映画『PK』が本当に素晴らしい映画だった。

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「きっと、うまくいく」の監督と主演による最新作。

どんな映画?

この監督の十八番であるコメディでありながら、社会問題にも鋭く切り込んでいくスタイル。

今作は純粋無垢で無邪気な主人公による、宗教の本質や先入観、違い、愛といったものが語られていきます。

PKの何が素晴らしいかというと「コメディとシリアスの緩急による独特な勧善懲悪」だと思います。

散りばめられた伏線を回収しつつも、みんなが沈黙している世の中の不正や盲信を面白おかしく糾弾していく様が本当に素晴らしくて、真面目一辺倒な映画では出せない妙な説得力やキャラクターの暖かさ、愛らしさが感じられます。

立ち向かうのは信仰そのものという、現代では最早タブー(日本人にとっては特に)と感じられるテーマに対し、毅然として問題提起を行う姿勢には拍手を送りたいです。

ただ、神や宗教を否定したりする映画ではないのですが、真正面から宗教への盲信に疑問を投げかけていて、ちょっと監督の身が心配です。

 

素っ裸のトンデモ野郎がやってきた!

主人公は宇宙からやってきた宇宙人で、言葉もわからない、地球の知識も無い、帰るための宇宙船を呼ぶためのリモコンも奪われてしまう。そんな主人公が故郷の星に戻るため四苦八苦するところから始まります。ところが降り立った地は多宗教国家インド。数多くの信仰が渦巻く国で、最後に主人公が行き着いた手段は「神に救いを求める」ということでした。

 

この主人公の純粋無垢さが本当に物語の酸いも甘いも引き立てています。

地球のことを何も知らないので、奇行を行っては周囲の人から「PK(酔っ払いという意味)」と呼ばれ、それがそのまま自分の名前になってしまったんですね。

彼は何も知らないが故に、ソクラテス的な問答法のような形で世の中の不正や疑問に対してズバズバと切り込んで行きます。

 

監督の前作の「きっと、うまくいく」でも アーミル・カーンは主演で少しトボけた学生を演じていましたが、またそれとは別の不思議さがあります。というか最初は言葉も話さないし怖かった。

 

信仰の違いで最愛の人と切り裂かれるヒロイン

ヒロインは留学先でイスラム教徒である青年と恋に落ちます。しかしヒロインの父親は盲信的なヒンドゥー教徒。交際することを咎められ、神の代弁者である導師様から「交際中の男は裏切る」と告げられ、信仰の違いによって二人は切り裂かれ、家からも勘当を言い渡されます。

 

作中では明示的に語られていませんが、彼女もこういった経緯で信仰の違いに懐疑的だった一人なのだと思います。

父に反発し、神に祈ることに疲れたPKと出会い、導師に立ち向かおうとします。

このヒロイン、ジャグー役のアヌシュカ・シャルマさんがとにかく美人、あとなんかセクシー。

   

 

「信仰」による救いと落とし穴

この世界を作り出した神は存在するかもしれない。それを信仰することによって救いを得る。つまり生きる希望や活力となる場合もある。しかし、その創造主である神を好き勝手に形取り代弁者を名乗る。宗教とは「人が勝手に作り出したもの」だとする。そして、その人が勝手に作った宗教の違いでどうして人が傷付かなければならないのか?救いを求める人に何故神は苦行を強いるのか?主人公PKは問います。

宗教は「人が作り出したもの」という言葉に自分はハッとさせられました。当たり前のことなんですが。

人は宗教に信仰以上のものを見ます。信仰の対象は宗教ではなく神のはずです。人が作り出した宗教のどれに所属するかによって祈り方とか戒律などが異なるが突き詰めれば同じ所に行き着くのではないか?元々同じ所にいるはずなのに、生まれて来た時にどの宗教に属するかなどの印など持っていないのに、勝手にカテゴライズして「違い」を生み出しているのは他ならぬ人ではないか?

 

作中で宗教を守るという名目でテロが起き、PKは慕っている人物を亡くします。

この映画の公開は2014年ですが、去年や今年に入って大々的に報復や宗教を起点としたテロが目立つようになっています。この映画は宗教の本質を皮肉ることで、人の恐怖心から信仰に縋る弱さや克服する強さのようなものを教えてくれました。

そして何がすごいってこんな重っ苦しいテーマなのに、全体的におバカで明るいコメディに仕立てあげてるところ。

 

 インド映画といえば「嬉しいことがあれば踊る」「悲しいことがあれば踊る」「恋に落ちれば踊る」みたいな認識しかないかもしれません。もちろん今作にも突然歌って踊る場面はありますが、インド映画の特徴はすごくハッピーということに尽きると思います。インド映画を観たことが無い人にもオススメしたいです。監督の旧作である「きっと、うまくいく」も傑作でPrime Videoでも無料対象で観れますので是非。

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